マトリクス組織入門!わかりやすい導入のポイント と組織の強化術
公開日:2024年04⽉18⽇最終更新日:2024年04⽉18⽇
近年、組織の新しい形として注目されているのがマトリクス組織です。しかし名前は聞いたことがあっても、具体的な内容やメリット・デメリットまではなかなかわからないのではないでしょうか。
この記事では、マトリクス組織についてまとめます。以下の点を深堀していきます。
・マトリクス組織とは
・マトリクス組織のメリット、デメリット
・導入においてのポイント
・運用強化におけるコミュニケーションの重要性
経営層や総務の担当者の方はぜひ参考にしてみてください。
マトリクス組織とは
マトリクス組織とは、複数の上司に直接報告する複雑な組織構造を指します。従来の一元的な上下関係(垂直構造)と、プロジェクトや業務に基づく横断的な関係(水平構造)が組み合わさった形が特徴です。
この組織形態は、ニューヨークのオフィス用家具メーカー、スチールケースが開発したものと言われています。それ以降、製品、プロジェクト、地域、機能など複数の要素を同時に管理する必要がある多国籍企業や大企業で多く採用されています。
マトリクス組織は情報共有やコミュニケーションの円滑化を推進し、柔軟な組織運営を実現します。しかし成功するためには明確なルールやロールの設定、広範なコミュニケーション能力、そして高度なリーダーシップが求められます。
マトリクス組織導入のメリット
マトリクス組織導入のメリットは数多く存在します。
まず一つ目は、リソースの最適化が挙げられます。マトリクス組織では各プロジェクトに必要な人材をフレキシブルに配置でき、人材のスキルや経験を最大限に活用することが可能です。
二つ目は、組織の柔軟性の向上です。従来の階層型組織と比べてマトリクス組織では必要に応じてチームを再編成しやすく、組織全体としての対応力が高まります。
そして三つ目は、グローバルな視野の育成が可能となる点です。各部門間の連携を重視するマトリクス組織では自分の業務だけでなく他部門の業務理解も進むため、幅広い視野を持つ人材が育ちます。
マトリクス組織導入のデメリット
マトリクス組織導入のデメリットには、主に三つの観点から見ることができます。
まず一つ目は、複数のリーダーの下で働くための混乱です。従業員が複数の上司の下で働く組織形態は、役割や責任の混乱を生む可能性があります。これは従業員へのストレスを増加させ、パフォーマンスを低下させるリスクとなります。
二つ目のデメリットは、意思決定の遅延です。マトリクス組織では決定に至るまでに多数の関係者が関与するため、事業のスピードが犠牲となることもあります。これは市場変動の速い現代ビジネス環境では大きなリスクを伴う場合があります。
三つ目のデメリットは、内部の競争を引き起こす可能性です。異なる部門間で資源を共有する必要がある場合、部門間での競争や対立が生じることがあります。これは組織全体のプロジェクトと目標達成に悪影響を及ぼす可能性があります。
これらのデメリットは、マトリクス組織導入を検討するにあたって考慮すべき重要な要素です。
他の組織形態との比較
マトリクス組織は、機能別とプロジェクト別の両方からリポートするという双方向の管理構造を持つ特性から、その他の組織形態と比較すると一部の特徴が際立ちます。
例えば従来型の階層型組織は上下のライン管理が特徴で、組織全体が一方向に連携して動くよう設計されています。これに対してマトリクス組織では、従業員は機能別の上司とプロジェクト別の上司の両方から指示を受け、その結果組織全体の協調性と効率性が高まります。
また平行的な組織では、特定のプロジェクトに専念するためにチームが形成され、そのチームが自己管理を行います。しかしマトリクス組織では、同時に複数のプロジェクトを推進するためのフレキシビリティがあります。
さらにネットワーク組織は外部パートナーとの連携を強調しますが、マトリクス組織は内部資源の最適な利用に重点を置き、組織内の知識とスキルを最大限に活用します。
よってマトリクス組織は他の組織形態と比較して、組織の柔軟性と効率性を高め内部資源を最大限活用する可能性が高いと言えます。ただし成功するためには、役割と責任の明確化、効果的なコミュニケーション、定期的な評価とフィードバックなどが重要となります。
マトリクス組織の導入プロセス
次に、マトリクス組織の導入プロセスについて解説します。以下の段階に分かれます。
- 導入前の準備
- 実際の導入段階
- 導入後のフォローアップ
それぞれ見ていきましょう。
導入前の準備
マトリクス組織の導入に向けた準備は時に複雑なプロセスになり得ますが、十分な事前計画を行うことでスムーズな移行が可能になります。導入前の準備としては、以下の2点が挙げられます。
①役割と責任の明確化
マトリクス組織を導入する際には、役割と責任の明確化が非常に重要です。それぞれのチームメンバーが自分の役割とそれに伴う責任を理解し、その範囲内で自主的に働くことが求められます。
具体的には、専門性を持つ各メンバーが特定のプロジェクトを担当し、それぞれの役割と責任に基づいてタスクを処理します。これにより一人ひとりが自分の仕事を最適に進め、その結果全体としての組織の効率が向上します。
②コミュニケーション計画の策定
マトリクス組織導入前の準備として、コミュニケーション計画の策定は非常に重要です。マトリクス組織では、従来の階層型組織と異なり複数のボスに直属する可能性があります。このため誰からどの情報を得て誰に何を報告するかなど、コミュニケーションルートを明確にしておくことが求められます。特に重複した指示や誤解を避けるために、各役職、プロジェクトチーム、機能部門間での情報共有方法、報告ライン、意思決定プロセスなどを詳細に定義することが重要です。
また定期的なミーティングのスケジュールや、緊急時のコミュニケーション方法も明記することを推奨します。たとえばマトリクス組織導入時に詳細なコミュニケーションプランを策定し、それを全社員に共有すれば、混乱を避けスムーズな組織変革を実現できます。
実際の導入段階
マトリクス組織の導入段階においては、次の2点が重要となります。
・組織構造の設計
・役割分担の決定
以下、具体的に見ていきましょう。
組織構造の設計
マトリクス組織の実際の設計段階では、組織構造を適切に設計することが重要です。
具体的には、プロジェクトや業務の特性に合わせて部門間の繋がりを明示的にするという措置が求められます。例えば製品開発部門とマーケティング部門が連携してプロジェクトを推進する場合、各部門の責任範囲と連携のための接点を明らかにすることが必要です。これにより、各部門が互いの業務を理解し、効率的に協働することが可能になります。
この段階で失敗すると後々の業務進行に混乱を招く可能性があるため、慎重に進める必要があります。設計段階では変更が容易であるため、十分な検討を行うことが求められます。
役割分担の決定
役割分担の決定は、マトリクス組織導入の重要なステップです。ここでは個々のメンバーがどのような責任を担うかを明示し、組織全体が効果的に機能するための基盤を構築します。
例えば各プロジェクトに参加するメンバーには具体的な役割が割り当てられ、その役割を達成するための目標や指標が与えられます。これにより各個人は自身の貢献が組織全体の目標達成にどのように影響するかを理解し、自己主導で業務に取り組むことが可能となります。
また役割分担の明確化は、社内コミュニケーションの効率化にも寄与します。原則として全てのメンバーが自分の役割と他者の役割を理解することで、適切な判断を下し効率的なコミュニケーションを行うことができます。
導入後のフォローアップ
導入後のフォローアップは、マトリクス組織がスムーズに機能し続けるために必要なプロセスです。以下の2つの主要な要素に焦点を当ててみましょう。
・定期的な評価とフィードバック
・問題解決のための手段
具体的に見ていきます。
定期的な評価とフィードバック
マトリクス組織の導入後には、定期的な評価とフィードバックが不可欠です。これは組織の思想とパフォーマンスの透明性を保証し、個々の貢献を評価し、改善の余地を見つける手段となります。
定期的な評価とフィードバックは、組織が最大のパフォーマンスを出し続けるため、また目標達成に向けた全員の参加意欲を保つためには必須のプロセスと言えます。
問題解決のための手段
マトリクス組織の導入後に問題が発生した場合、即座に解決策を見つける能力は非常に重要です。問題解決手段の一つとして、定期的なミーティングの設けて情報共有や問題点の洗い出しが挙げられます。
更に、外部の専門家によるコンサルティング、専門的なアドバイスを活用して組織が直面する難題に対処することも有効です。また内部で問題を解決するために特別なチームを組織し、そのチームが問題解決に全力を注ぐケースも見られます。
これらの手段により組織内の問題や課題を迅速かつ効果的に解決し、組織の持続的な成長を支えることが可能となります。
マトリクス組織の運用と強化
最後に、マトリクス組織の運用と強化について解説します。以下の点が挙げられます。
・効果的なコミュニケーションの実現
・柔軟性と適応性の向上
・チームワークの促進
・継続的な学習と成長
順に見ていきましょう。
効果的なコミュニケーションの実現
マトリクス組織での効果的なコミュニケーションは、組織の成功に不可欠な要素です。たとえばいくつかの大手企業は、マトリクス組織の導入を通じてコミュニケーションの改善を図っています。特に重要なのは、階層間の情報共有の円滑化と各部門間の意思疎通です。これらを実現するためには、定期的なミーティングの開催や共通の情報共有ツールの使用が有効です。
また、専門知識を持つメンバー間の対話を通じて問題解決や意思決定を助けることも大切です。さらにコミュニケーションは、組織の風土や個々のメンバーの態度にも大きく影響されます。そのためオープンな気風を醸成し、異論を尊重する風土を育てることも重要となってきます。
最終的に、これらの取り組みがマトリクス組織全体の効率と生産性を向上させることにつながります。
柔軟性と適応性の向上
マトリクス組織は、業務の変化や環境の動向に素早く対応するための柔軟性と適応性の向上が求められます。そのためには絶えず情報をアップデートし、新しい知識やスキルを学び続ける環境の提供が必要です。例えばIT業界のような急速に変化する分野では、新しい技術や言語を学べる研修や教育プログラムの提供が重要となるでしょう。
さらにマトリクス組織は各部門が密接に連携して業務を進めるため、組織全体としての意識や一体感を醸成する文化の形成も重要です。これにより、各個人が自身の業務だけでなく組織全体としての目標に対する責任感を持ち、積極的に思考や行動ができる環境を作ることが可能です。
チームワークの促進
マトリクス組織では各メンバーが複数のリーダーに報告するため、コミュニケーションの重要性が高まり、これがチームワークを促進します。共有の目標に向かって効率的に取り組むためには、全員が課題や進捗状況を共有し助けを求めたり提供したりする開放的な環境が必要です。チームメンバー間の情報交換が円滑であれば、問題を早期に察知し解決するためのアイデアを共有することが可能となります。
また組織全体で各部門の動向や課題が理解できるため、一体感が生まれ、メンバーの貢献意欲を高める効果もあります。例えばマトリクス組織の導入によりチーム間のコミュニケーションが活性化するなどです。
継続的な学習と成長
継続的な学習と成長を実現するためには、一人ひとりが自己啓発の姿勢を持つことが必要です。しかし個々の努力だけでは困難な場合もあり、組織全体で支える体制を作ることが重要です。
また、教育用のプラットフォームを社員全員で利用できるようにすることも一つの手段です。これにより、新たな知識を得たりスキルアップを図ったりすることが可能になります。成長するための学習環境を整えることで、組織全体のパフォーマンス向上につながります。
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まずは現在の延長で組織力アップを目指す場合は、東京ITスクールの研修をご活用ください。マトリクス組織は強い組織となるための方法の1つですが、すぐに導入が難しい場合などもあるでしょう。大きな変革を伴うため、事前の入念な準備も必要です。
まずは現在の体制を活かしつつ組織力アップを計るには、人材の教育が有効です。東京ITスクールでは、組織の活性化に役立つ研修を多数ご用意しています。
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講師としての登壇・研修運営の両面で社員教育の現場で15年以上携わる。
企業のスタートアップにおける教育プログラムの企画・実施を専門とし、
特にリーダーシップ育成、コミュニケーションスキルの向上に力を入れている。
趣味は筋トレと映画鑑賞。